何気なく大切な用語の解説集
本書は知的に美しく生きるための基本的な用語を解説しています。鷲田氏は、美しく知的に生きるためには人間の世界全体に対する美しく知的な目(哲学)が重要と述べます。哲学では「言葉」をツールに用いて思想構造を組み上げるため、単語の意味や用途を明示します。ゆえに本書は基本用語の解説なのです。鷲田氏の解説はごく当然といった印象が強いものの、時には見過ごして点を指摘されることもあります。 いくつかハッとさせられた個所を挙げましょう。 ・リストラとは「古いものの死」・・・リストラ(restructuring)は建て直しの意味です。改善ではなく、以前のものを破壊することに他なりません。やはり「古いものの死」なのです。 ・人は常にモラトリアムを必要とする・・・人は、「今、何者である」と「まだ何者でもない」という二つの自己認識をもつ存在です。指針なしにふらふらするのは最悪ですが、暫定的にでも決めたことに懸命に取り組んだうえで、そこに居場所を見出せなかったら、見切りをつけて次の方向に進むことが大切です。そう思ってはいることでも改めて指摘されると心強いものです。 また、モラトリアムはフリーターのように職業を持たないことを指すのではなく、不動のアイデンティティを持っている人でも側において考えなければならない時代になってきているとの指摘は「なるほど」と思わせられます。既に、外部からの規範に自分を合わせる生き方は無理を生じてきています。自分の価値基準を醸成し、それに沿った生活基盤を得て行くには準備期間・移行期間(モラトリアム)が必要です。 ・歴史はhis ? Story(彼の物語)である・・・これは目からウロコでした。単なる事実や事件を寄せ集めても歴史にはならないと知ってはいましたが、事実を踏まえつつ誰かの視点や見方でそれらを貫徹する流れが必要なのです。 本書はこういった何気なく大切なことが書かれています。
キーワードの解釈が面白い
大雑把に言えば、この本は三つのパートに分けられるかもしれない。第一に、快適に仕事や思考する上での空間に関する議論。第二にどういう形で知的な思考や作業を行っていくと快適と言えるのかという議論。第三として、夏目漱石、司馬遼太郎、三島由紀夫、開高健、吉行淳之介、といった主に文学者たちのライフスタイルに焦点を当て彼らの見習うべき側面やちょっと偏りすぎではないか、という側面を検討した部分。 前・中盤は一つのキーワードに対して、エッセイに近いスタイルで、時にプラトンやソクラテスなど哲学者のエピソードなどを交えながら筆
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